不動産売却の基礎知識
ここでは不動産の売却を検討されている方向けの基礎知識をご紹介いたします。
①不動産ってどう売却するの?
混乱しないためには大まかな流れを知っておく
「今の住まいを売却して、新しい住まいに引っ越したい」。そう考えても、そもそもどう家を売ったらいいのか、いくらで売れるのか、手続きはどうすればいいかなど、初めての場合は分からないことばかりです。混乱しないためには、まず大まかな流れを知っておく必要があります。
■大きく分けて7段階の手順がある
不動産をスムーズに売却するためには、以下のような手順で進めます。
1.スケジュール設定
2.査定依頼
3.査定
4.不動産会社へ依頼
5.売却先探し
6.売却
7.引渡し
【1.スケジュール設定】では、いつまでに売りたいのか、いつごろまでに引っ越したいのかを決めます。買い替えの場合は、同時にいつごろ新しい住まいを購入したいのかも決める必要があります。 これをいつに設定するかで、不動産会社との媒介契約のタイプや、価格設定、売買契約などの方法に影響が生じます。例えば、気長にじっくりと売却したい場合は、希望する売却価格、強気の売却価格を設定しやすくなります。一方で、スピーディに売却したい場合は、できるだけ売りやすい価格、市場に出したときにお値打ち感のある売却価格に設定する必要があります。
【2.査定依頼〜3.査定】では、売りたい不動産がいくらの価値があるか、つまり売却できる価格の目安を把握します。査定を依頼する先は不動産会社になります。ちなみに査定方法は物件情報を基に簡易な査定を行う「簡易査定」と実際に物件を見てもらい査定を行う「訪問査定」の2種類があります。
【4.不動産会社へ依頼】では、売却先を探してくれる不動産会社を決定します。依頼する場合は媒介契約を結びます。この契約には、専任媒介、専属専任媒介、一般媒介の3種類があり、それぞれ売りやすさや売却価格に影響します。
【5.売却先探し】では、実際に不動産を市場に出して、購入してくれる人を探します。不動産会社との媒介契約にもよりますが、売却先探しを不動産会社に頼る方法や、知人などを介して自力で買い手を探す方法もあります。
【6.売却〜引渡し】では、買い手側と売買契約を結びます。ここで売却価格が決まるほか、書類での登記や権利の移転手続き、売り渡す不動産の状態の説明・共有、引渡し時期などを決定します。その後、建物がある場合はカギを引渡したら引渡しが完了します。
手順と同じく売却の目的も明確化しておくと取引がスムーズに
売却活動を開始する場合は、以上のような手順をきちんと把握した上で動きだしましょう。合わせて、売却の目的(スケジュール、お金、ライフスタイルなど)も明確化しておくとよりスムーズに進めることができるでしょう。
②売却の前に、自分たちの経済状況を把握しよう
不動産を売却する場合、事前にきちんと自分の経済状況を把握しておく必要があります。これがおろそかになっていると、売却時や新しい住まいを購入する際に思いがけないトラブルに遭遇する場合があるので注意が必要です。
ローンの残債は売却時に精算する必要がある
不動産の売却は売り手、つまり自分が想定している通りに物事が進まないケースが少なくありません。よくあるのは、想定していた価格よりも低い価格でしか売却ができず、ローンの債務が残ってしまうケース。住宅ローンは不動産を担保にして借りるケースがほとんどなので、その不動産を売却する際には既存のローンを精算する必要があります。
残債がある場合は借り替えローンなどで対応
不動産がローンの残債より低い価格でしか売れなかった場合はどうすればよいのでしょうか。基本的には残債がある場合は、残りのローンを一括で返済しなくてはいけません。例えば、ローンの残債が2300万円で売却価格が1500万円の場合、800万円が精算しなくてはいけない金額となります。しかし、これだけの大金をポンと用意できる人は多くないでしょう。
このような場合は、金融機関の「買い替えローン」や「任意売却」を利用する方法があります。
「買い替えローン」はその名の通り、不動産の買い替え時に利用できるローンのことです。新たな住宅を購入するために借りる額に、前の不動産のローン残債を上乗せして借りることができます。
「任意売却」は、ローンの残債によって金融機関に不動産を再び担保物権とされることを防ぐために、専門の会社に売却を依頼する方法です。これを利用すると、残債は専門の保証会社に返済することになり、無理のない範囲で分割して返済することができます。
このように、残債がある場合に対処する方法はいくつかありますが、その時点で返済が終わるわけではありません。返済が続けば、その分の利息もかかってきますので、残債の状況や売却するスケジュールをしっかり考え準備をすることが必要です。
売却で損失が出た場合の税制優遇もある
不動産を売却して損失が出た場合、税制の優遇措置を受けることができます。「譲渡損失の繰越控除」というもので、住宅を売却して損失が出た場合は、売却した年とその翌年から3年の間、所得税・住民税から繰り越して精算することができます。 とはいえ、多くの負債が残るような売却は新たな住宅を購入する際にも大きく影響しますので、売却価格の設定や買い替える住宅の希望価格はしっかり想定しておきましょう。
③3種類ある媒介契約、それぞれのメリット・デメリット
一般的に、不動産を売却する場合は、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約は、希望する仲介のサービスや手数料を明確化するものなので、契約内容をよく把握しておく必要があります。
媒介契約の種類によって、売り手の自由度や不動産会社の対応が変化する
不動産会社と結ぶ媒介契約には大きく分けて3種類あります。「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」があり、それぞれに特徴があります。
専属専任媒介契約
不動産会社1社だけに仲介を依頼する媒介契約で、契約を結ぶと他の不動産会社に仲介を依頼することはできません。専任媒介契約と仕組みは似ていますが、異なるのは不動産会社が見つけた売却先としか取り引きすることができません。契約の有効期限は最大で3カ月となっており、不動産会社は媒介契約成立から5日以内にREINS(レインズ)への登録が義務付けられています。また、不動産会社は1週間に1度以上の頻度で依頼者へ仲介業務の実施状況を報告することも義務付けられています。 依頼側がこの媒介契約を結ぶメリットとしては、不動産会社が限られた期間内に買い手を探さなくては売買契約を仲介できないため、比較的高い確率で買い手が見つかることなどが挙げられます。
専任媒介契約
専属専任媒介契約と同じく、不動産会社1社だけに仲介を依頼する媒介契約で、契約を結ぶと他の不動産会社に仲介を依頼することはできません。異なるところは自力で探した買い手を見つけて不動産会社を介さずに契約できることがあげられます。契約の有効期限は最大で3カ月となっています。不動産会社は媒介契約成立から7日以内にREINS(レインズ)への登録が義務付けられています。また、不動産会社は2週間に1度以上の頻度で依頼者へ仲介業務の実施状況を報告することも義務付けられています。 依頼側がこの媒介契約を結ぶメリットとしては、自力で買い手の目処はたつが、さらに好条件の買い手を探したい際に利用しやすい点などが挙げられます。
一般媒介契約
同時に複数の不動産会社に仲介を依頼することができます。自力で探した買い手と不動産会社を通さずに契約することも可能です。契約に有効期限はなく(行政指導はあり)、REINS(レインズ)への登録義務もありません。不動産会社が依頼先に業務の実施状況を報告する義務もありません。契約方法には、明示型と非明示型があります。明示型は、他にどの不動産会社と媒介契約を結んだか通知する方法で、非明示型は通知しない方法です。 特徴としては、一見幅広く買い手を探すことができそうな媒介契約に感じがちですが、不動産会社にとっては(専属)専任媒介契約と比較して安定性の低い依頼となるので、買い手探しに時間がかかってしまう可能性があります。また、明示型・非明示型についても同様です。
価格を重視するか、スピードを重視するか
媒介契約の種類を選ぶポイントとしては、主に、売却先の目処の有無、売却価格、売却する時期がどうかによって異なります。時間をかけて納得する価格で売りたい場合は「一般媒介契約」、早期に確実に買い手を見つけたい場合は「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」を結ぶといいでしょう。
④査定には2つの方法がある
所有する不動産がいくらくらいの価値があるのか知りたい場合に利用するものが、不動産会社による査定です。売却の際に大いに参考になるものですが、そもそもこの査定はどのように行なわれるのでしょうか。
データのみで算出する方法と、訪問して調査する方法がある
査定には「簡易査定(机上査定)」と「訪問査定」の2つの方法があります。
・簡易査定(机上査定): 周辺の売り出し事例や過去の成約取引事例、1年に1度発表される公示価格などに基づいて、概算の査定価格を算出する方法のことを指します。不動産会社を訪問しなくても、電話、メールなどで物件種別(マンション、一戸建て、土地)、所在地、面積(専有面積、土地面積、建物面積)、築年数、希望する売却時期などを依頼することが可能となっています。物件の基本的な情報から算出するため、不動産会社によって大きな差が生じることはほとんどありません。査定時間も短期間で算出することができ、早ければ数時間で査定価格を知ることができます。
・訪問査定:不動産の基本情報から算出する簡易査定(机上査定)のデータに加えて、不動産会社の担当者が現地(所有する不動産)を訪問した際に、物件の使用状況や土地の地形、形状、接道状況、日当たり、周辺環境を確認し、さらに法務局や行政庁などで法規制やインフラ状況を調査した上で算出する詳細な査定方法のことを指します。訪問査定に要する時間は数十分程度、査定額を提示されるまで数日かかるのが一般的です。査定を依頼する際には、事前に登記簿謄本(土地・建物)、公図、測量図、建物図面、権利証、購入時の重要事項説明書などを準備しておく必要がありますが、不動産会社によって必要となるものが異なるので、査定を依頼する際に確認しておいたほうがいいでしょう。
簡易査定は参考値を知るため、訪問査定は実際に売却する際に利用する
では、この2つの査定はそれぞれどのようなときに利用すればいいのでしょうか。例えば、前者の「簡易査定(机上査定)」は、買い替えたい家があるが、今の家を売って買い替えることが可能かどうかの実現性を図る材料として利用するといいでしょう。また、将来的に遺産相続が発生する場合、資産価値がいくらくらいになるか知っておく場合に利用することもできます。
後者の「訪問査定」は、現実的に不動産の売却を考えている場合に利用するといいでしょう。査定にプラスになったこと、マイナスになったことも把握できるので、売却する際に参考になることを知ることもできます。 ただし、両者の査定とも会社によって、査定額に多少の差が生じることがありますので、できるだけ複数社に依頼しておくと良いでしょう。
⑤売却価格が想定より低い価格の場合はどうする?
長年暮らした家は愛着もあるし、買い替えのために売りたい価格の最低ラインもあるでしょう。でも、実際に売買契約を結んだ際に、当初想定していた価格より低くでしか売れないケースがあります。そういった場合は、どのような方法をとればいいのでしょうか。
ローンの残債が残るとさまざまなデメリットがある
不動産の価格は、エリアや築年数などの条件のほか、物件個々の状況、また世の中の景気によっても左右されます。ですから、当初想定していた価格より高く売れることもあれば、安い価格でしか売れないケースもあります。
もし想定より高く売れた場合は、譲渡所得税などの税金が発生するものの、利益が出るので苦労することはほとんどないでしょう。
問題は、想定よりも低く売れた場合の対処方法です。
最も問題となるのは、ローンの残債が残ってしまうケースです。
住宅ローンは基本的に不動産を担保にして借りるものなので、その不動産が売却によってなくなってしまえば、残ったローンは一括で精算しなくてはなりません。しかし、例えば数百万円も残債が残ってしまうケースだと、なかなか一括で精算する資金を準備できるものではありません。
そうならないために、やむを得ない場合を除き、売買契約を結ぶ前までに売却計画を見直しておいたほうがいいでしょう。
場合によっては売却自体を断念する勇気も必要です。売却スケジュールを見直して、残債を返済できるよう計画を立て直しましょう。
買い替えの場合は、金融機関の「買い替えローン」を利用することもできます。これを利用すれば、残債の返済分を加えた新たなローンの借り入れができますので、残債を一括精算する資金の準備は不要になります。ただし、残債分も余分に借りるため、新たなローンの返済が重くなります。新たなローンの返済に耐えられるかどうか事前に計画を立てておいたほうがいいでしょう。
損失が出た場合、税金が控除される制度がある
現在、住居を売却して損失が出た場合には、税金の控除を受けることができます。
「譲渡損失の繰越控除」というもので、マイホームを売却して損失が出た場合、売った年とその翌年から3年のあいだ、損失額を繰り越して所得税・住民税から相殺することができます。例えば、年間所得400万円、譲渡損失が1600万円の場合、マイホームを売った年から4年のあいだ、申告する所得額が0円となります。この制度を利用することで、損失分をすべて補うことはできませんが、納税額が低くなる分、受けた損失を少なくすることができます。 以上のように、売却によって残債や損失が出た場合の対応方法はさまざまなものがありますので、有効に利用してスムーズな売却・買い替えを実現しましょう。
⑥購入希望者が見学に訪れる際の心得
不動産会社による査定が終わり、売出価格を決めたら、いよいよ不動産の買い手探しになります。売主はできるだけ売却する不動産に好印象を持ってもらいたい、少しでも高く売りたいと考えるものですが、それらを実現するにはどのような準備が必要なのでしょうか。
清潔感を保つことが重要
購入希望者に好印象を持ってもらうにはいくつかのポイントがあります。
まずは広告などに掲載される物件情報についてです。広さや条件については決まっている情報なので変更はできませんが、売出価格は売主が決定することができます。お値打ち感を出すために安めの価格を設定するほうが好印象を持ってもらいやすいと考えがちですが、価格が安いとその分物件にウィークポイントがあるのではないかとマイナスイメージを持たれてしまう可能性があります。また、買い手がついても安い価格でしか売買できなくなることもありますので、極力相場に近い価格を設定するほうが無難でしょう。
次に重要なのは見学時の印象です。好印象を持ってもらうには、この点が最重要と言っても過言ではありません。 まず、最低限必要なのは清潔感です。室内の掃除はもちろんのこと、一戸建ての場合は庭の手入れが行き届いていることも重要になります。清潔感で特に気にされやすいのは水回りです。キッチン、洗面所、トイレ、バスルームなどの清掃は徹底的に行なっておきましょう。経年劣化で掃除だけではカバーできない場合はリフォームを検討するのもひとつの手です。
マンションであれば、室内だけでなく共用部の清潔感も重要です。管理状態が悪いと感じている場合は、(可能であれば)見学までに管理人などを通して改善してもらっておいたほうがいいでしょう。
また、ペットを飼育していた場合や喫煙していた場合は、売主には気づきにくい匂いが残っていることがあります。そういった場合は、消臭剤でケアをしておくか、事前にクリーニング業者に清掃を依頼しましょう。
見学は、立退きが終わった場合のほかに、居住中にも行なわれる場合もあります。居住中の場合は、食事や子どもが遊んでいた形跡があると見学者によってはマイナスイメージになることがありますので、こまめに汚れなどをチェックしておくことが大事です。
自分が見学者になったと想定してみる
自分が見学に訪れたと想定して客観的に室内を見て回るのも効果的な方法です。生活上気付かなかったキズや汚れを発見することもできますので、見学前の準備での抜け漏れを防ぐためにも必ず一度は行っておきましょう。
⑦売買契約時に必要なこと
売却先が決定したら、いよいよ売買契約に進みます。不動産を購入する場合と同じく、この契約にはさまざまな手続きが必要になりますので、事前にひと通り覚えておきましょう。
書類を交わすほか、物件の最終確認なども必要
売買契約には、「不動産の最終確認」「各種書類の手続き」「代金の支払い・受け取り」「固定資産税などの精算」「カギの受け渡し」「諸費用の支払い」が必要となります。
「不動産の最終確認」では、売り手・買い手の両者で物件の最終チェックを行ないます。これによって両者の了承を得たことになるので、契約時の状況と異なっていても、その後のトラブルを防ぐことができます。
確認するポイントとしては、設備が設備表の記載どおりであるかどうか、給排水設備の故障はないか、雨漏り・害虫はないか、ガス配管の状況はどうかなどの確認を行ないます。
「各種書類の手続き」では、司法書士同席のもとで登記の移転を行ないます。また、管理規約、パンフレット、付帯設備の保証書、建築確認通知書などの受け渡しを行ないます。
その他、売買に関わることが記載された売買契約書を交わします。
「代金の支払い・受け取り」では、買い手側がローンを組む金融機関担当者同席のもと、代金の受け渡しを行ないます。このとき、売主は領収書を発行し、買主に渡します。 「固定資産税などの精算」では、引渡し日以降に買主側の負担となる金額を日割りで算出し、売主は清算金を受け取ります。
「カギの受け渡し」では、売買物件引渡完了確認書を交わします。まだ売主側の退去が完了していない場合は、売買契約書の特約部分に引渡し猶予の時期を記入します。
「諸費用の支払い」では、仲介を依頼した不動産会社に仲介手数料を支払います。
分からないことは不動産会社に相談を
以上、不動産売買契約で交わされる主な手続きを紹介しましたが、これらすべてを完璧に把握しておく必要はありません。必要な手順などはすべて仲介を依頼している不動産会社が把握してサポートしてくれるので、案内に沿って行えば間違いなくスムーズに進めることができるでしょう。 とはいえ、大きな金額が動く取引であり、手続きのなかには複雑なものもありますので、不安に感じる人もいるでしょう。そういったときは不動産会社にその旨を相談してみるのが効果的な方法です。事前に準備しておくものも含めてアドバイスを受けることができるため、些細なことでも構わないので不動産会社に伝えておくと安心につながります。
⑧売買後に必要な手続きとは?
売買契約が終わったら、基本的に売却は完了です。しかし、契約時までに退去が完了していない場合、引渡し日が先延ばしになるため、手続きが完了しないケースもあります。また、税金など、引渡し完了後も必要となる手続きがあるので、主なものを把握しておきましょう。
引渡し猶予をつける場合は、カギの受け渡しの猶予も忘れずに
まず、売買契約時に引渡しができない場合は、売買契約書の特約部分「引渡し猶予」を設定した上で署名・捺印します。
引渡し猶予とは、売主側が特約で引渡しの時期を契約後の特定日に特約で指定することです。主に、自宅の買い替えを行なう売主が利用することが多く、旧住居の引渡しと新住居への入居のあいだに日数が空いてしまう場合にこの特約がつけられます。
ただし、指定される期間としては数日から1週間など短期間になるケースが一般的です。この期間中は、所有権が新しい所有者に移りますので、猶予期間中に売主を居住させることを了承する旨を契約時に書面で交わす必要があります。 そして、この際に気になるのがカギの受け渡しです。通常であれば、売買契約を締結した時点で不動産の所有権が移るため、退去の有無を問わずカギの受け渡しが行なわれます。しかし、売買契約書の特約部分にカギの受け渡しを引渡しと同じタイミングにすることができます。
利益・損失どちらでも優遇税制が利用できる
引渡しが完了した後の手続きとして必要なことは税金の申請です。
売却(譲渡)したときに利益が出たか、損失が出たかによって申請方法が異なり、前者は譲渡所得税がかかり、後者は譲渡損失の繰越控除が利用できます。
譲渡所得は、土地や建物を売却したときに利益が出た場合にかかる税金のことで、所得していた年数によって税率が異なります。所得期間が5年を超えるかどうかによって税率が異なり、短い場合は税率が高くなります。 ただし、この制度は自分が住居として使用していた場合の不動産の場合は特例があり、譲渡所得が3000万円までは控除の対象となります。
一方、譲渡損失がある場合、所得に応じて損失額が所得税・住民税と相殺できる「譲渡損失の繰越控除」が利用できます。これは、譲渡で損失が出た場合の損失額を、その年の所得額から控除されるもので、例えば、年間所得400万円、譲渡損失が1400万円ある場合、その年の申告する所得額が0円になります。さらにこの制度は、最初の年に相殺できなかった損失分を翌年以降3年のあいだ繰り越すことができるので、所得金が一定の場合は、1年後と2年後は申告する所得額が0円、3年後は申告する所得額を200万円にすることができます。
このように、税金の優遇制度は生活面においても恩恵が多いので、ぜひ利用しましょう。